2018.11.2
講座の〝隠し味〟~「佐渡を世界遺産に」に学ぶ~
事務局からのお知らせ
今年度シニアカレッジ新潟2年次でご講義いただいた「佐渡を世界遺産にする新潟の会」講師の山田修さんから受講生の皆さんへメッセージをいただきました。
縁あってシニアカレッジ新潟の講座を担当させていただく機会を得ました。
普段は小、中、高校生(どちらかと言えば小学生が中心)相手の世界遺産をテーマにした出前授業が多いので、果たして大人相手それも退職し意欲を以て学んでいる人生の達人たちに、どうしたら佐渡を世界遺産にすることの意義を伝えられるだろうかと考えました。
●奥深い佐渡の自然、歴史、文化
もともと佐渡は、奈良時代の律令制の下に国府が置かれたとされ、上越にあった国府・越後国と並ぶ一国でした。
自然の豊かさ、歴史の奥深さ、文化の多様性を土台に佐渡の存在そのものが世界遺産ではないか、私を含めそう考える人も少なくありません。
「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」に絞り世界遺産活動は進められていますが、多くの人に理解を得るに講座内容の使い分けは不要、というのが結論です。
つまり講座対象の年代によって話の進め方や組み立て、表現方法はある程度異なるにしても、佐渡をめぐる本質は変わるものではないから講座ノートは一冊でいいと思っています。
●佐渡に流された能の「世阿弥」
講座での世界遺産関連の主題は別の機会に譲りますが、講座で佐渡と流人に関連し、私が日々暮らすに当たっての心構えについて話をしたことがあります。
世阿弥(1363年?~1443年?)の存在です。
世阿弥はあの金閣寺を建立した室町幕府の三代将軍・足利義満に用いられ、能を世界にも通用する優れた芸術に大成させました。
しかし、六代将軍・足利義教に嫌われ佐渡に流されました。
佐渡で残した小謡集「金島書」に〝こがねのしま〟と佐渡の金を記しています。
配流前に書いた「花鏡」で〝初心忘るべからず〟と今に伝わる格言を残していることは知る人ぞ知る、です。
●いまこそ「初心忘るべからず」
人生にはいくつかのステージがある。
若い時の初心、人生時々の初心、そして老後の初心―それらを忘れるな、というのです。
自分は○○になる!と若き日に打ち立てた初心だけが初心ではないのです。
私なりに解釈すれば「かえりみて己を知るべし」「日々真面目あるべし」と説いた会津八一の学規にもたどり着く源流ではないでしょうか。
いつまでも過去の栄光にとらわれず、還暦や古希なら古希の初心を、と言われているようで冷や汗が出ます。
私自身の戒めですが、講座での〝隠し味〟として受け止めていただければうれしいことです。
(平成30年10月30日記す)
【講義の様子】